/jp/ - Otaku Culture

夕刻から続く雨で黒々と濡れるビルの屋上に、傘もささずに対峙するふたりの男がいた。
黒衣の男と、白衣の男。黒衣の方は長身で引き締まった若い男だ。黒い外套を素肌の上からじかに着こんでいる。年の頃は二十代の前半。腰まで伸びた長髪が艶やかに濡れ、広い肩幅から女性と見まがうことはないものの、独特な色気を発している。道を歩けばすれ違った誰もが振り返るだろう精悍な美貌が、今はおそろしいまでの鋭く冷たい殺意を帯びていた。
対する白衣は、巌のような男だった。さほど長身でもないかわりに、鎧ほどにも膨張した筋肉が全身をくまなく覆っている。衣服を押し上げる隆々たる肉体は実戦によって鍛え抜かれたものであるのか、大型の肉食獣を連想させる獰猛な闘争心を宿していた。
両者は数メートルほどの距離を開けて、互いに微動だにしない。
かれこれもう数分も、こうして固まっているのだ。