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>> No.15783304 [View]
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15783304

かつていたざくろちゃんはもうどこにもいなくなっていた。
遠い世界の果てまで私は探しに行った。何億光年という距離の旅をした。
それでもざくろちゃんは姿をみせてくれなかった。ずっと一人でさまよっていた私が惨めだった。
死にたい・・・一人でつぶやいて目を瞑った。浮かび上がってくるのはざくろちゃんの顔だった。
記憶の中にある美しいざくろちゃん。ざくろちゃんの艶やかな黒髪、やわらかな頬、まるで実体があるかのように思えて私は手を触れた。
ひさしぶり、ざくろちゃん。私は言った。ざくろちゃんもそっと私の頬に手を触れてきた。私たちは互いにつながっていた。心だった。
心の中にざくろちゃんは存在して私と一体化していた。沸々を湧き上がってくる情動に身を任せて私はざくろちゃんいるぞー!!と叫んだ。
街中だった。ビルの屋上だった。風がふいていた。一歩踏み出せば、転落死確実な高さの場所に私は立っていた。見下ろすと人が米粒のように小さかった。
そうだ、私はいま自殺をしようとしていたんだった。
ざくろちゃんを見つけられなくて嫌になってこの世に希望はないなんて思いつめて、ここまできたんだった。
ぼんやりと自分の手を見た。まだ白い幼いような少女の手だった。これはざくろちゃんの手だと思った。
さっきまではどんなにこれが老けてみえただろう。傷だらけの手だったのだ。
私は無心に頭をかきむしったり、壁につめを立ててがりがりしたり、猫みたいに四速歩行で街を歩いていたり、ゴミ箱をあさっていたり、
そんなめちゃくちゃなことばかりしていたんだった。思い出した。私は、荒廃していた。それがどうだろう。心の中のざくろちゃんと会えて、
私は清純そのものになったのだった。ふと空を見上げた。ひまわりが咲いていた。眩しすぎて目を細めた。しかし、美しかった。
どこまでも吸い込まれていきそうな空だった。もしかすると足を踏み出せば落ちるんじゃなくて上空に舞い上がっていくのかもしれない、そう思えた。
心が妙に浮き立った。ねぇ、ざくろちゃん、私はここから足を踏み出してもいいのかな。落ちて死んでしまわないかな、でもきっと大丈夫だよね。
だってざくろちゃんは翼が生えているから私と一緒に飛んでくれるんだもんね。わたし、ざくろちゃんと一緒に飛びたい。
この雲がひとつもない青空をどこまでも、どこまでも突き抜けていきたい。
雲を超えて、地表なんてみえない高さのところまでいってきっとそこは天国に近い場所で私とざくろちゃんはいつまでも笑い会って旅をするんだ。
終わりなき空のたび。永遠に続く旅。ずっと幸せ、私とざくろちゃん、永遠に、一緒。もう何も心配することはなかった。踏み出そう、私は決意した。
一歩、足を踏み出した。ふわっという感覚が私を包み込んだ。心地よかった。ざくろちゃんが私を包み込んでくれたんだ。今から私は空へと旅をはじめるんだ。
よかった、私たちはハッピーだ。さようなら、地表の人、哀れな人間・・・。もう何も思いつめることはなかった。私たちは自由になった。
ざくろちゃん、これからはずっと一緒だね。ざくろちゃんは私にうんと言って、小さく微笑んでくれた。私たちは天使になった。

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